LL Tigerにスピーカーとして参加いたしました
7月31日に開催された「LL Tiger」というカンファレンスのセッション『LLと電子書籍』にて、弊社代表の高橋がスピーカーとして参加いたしました。
『LL Tiger』は2003年から毎年開催されているLightweight Language(LL)のイベントの2010年版で、狭義のLLファンのみならず、広くプログラミングに興味を持つ方々が参加されます。『LLと電子書籍』セッションは、読み手としても技術的にも興味を持つ人が少なくないであろう電子書籍について、LLを題材とした(紙の)書籍や雑誌に関わってきた方々が、電子書籍について語り合う、という形でした。
イベント用に作成した資料を一部加工したものをslideshareにアップしてあります。
内容についていくつか補足を。
最初の年表はちょっと毛色の変わった感じに見えるかもしれません。これは、電子書籍のフォーマットを考える際、単純に紙の書籍と電子書籍のことだけを考えるよりも、もっと広いところから考えた方がいいのでは?ということで、「DTP/CTS(要するにコンピュータ支援の組版)」、モバイル、Web、そしてマルチメディア、という4つの文脈で整理したものです。
もっとも、細かいことを言えば、個々の事象は関連しあっていて、このようにきれいに分類することはできないわけで。とりわけマルチメディアは、HyperCard辺りから始まる(もちろんこれ以前にもあるにはあったはずですが)セルフ・パブリッシング的な流れと、同じくこれまたHyperCard辺りからのインタラクティブ性を求める流れが混ざっているのが見通しの悪いところかもしれません。とはいえ、たとえば『電子出版クロニクル』を繙くまでもなく、やはり電子出版の流れにあっては(CD-ROMと)マルチメディアは重要なわけであり、そしてここ数年を見ても、そのような流れが(上記ではうまく表現しきれませんでしたが)AjaxとWeb2.0からHTML5へと続く動き、さらにケータイ・スマートフォンの進化によって、Webもモバイルも巻き込み、様々な経緯や思惑の絡み合ったものとして、「電子出版」の名の元に現在もなお進行中なわけです。にしても、そもそも.mobiにしろT-TimeにしろHTMLの影響下にあったりしますし、もう少し良い書き方がありそうにも思います。
続く印税額と売上額の表は、ぱっと見たところではすごい情報に見えるかもしれませんが、特に何の秘密も稀少性もない、普通に公開情報を組み合わせただけの表です。発表の際にも少しお話ししましたが、この表を見ても明らかな通り、AppStoreやAmazonを使わずに自前で販売する選択肢を選んだ場合、趣味ならともかく事業として電子出版を行うのはなかなか難しいなあ、と言わざるをえません。決済手数料についてはもっと割のいい仕組みもあるでしょうが、小さな組織や個人単位で容易に導入できるものはまだまだ少ないでしょうし。もちろんこれ以外にもサービスを提供するためのインフラやサポートなどのコストも必要なのは言うまでもありません。そのため、イベントでも話した通り、電子書籍単独での採算を考えない(電子は広報宣伝に使って紙で儲けるとか、すでに紙で出版して減価償却済みのコンテンツを電子でも出す等)方法が、現実的な事業戦略だとは思います。
とはいえ、達人出版会ではあくまで「紙でもWebでも流通していないコンテンツ/パッケージを生み出し、流通させられる可能性」を追求したいと思っています。その一点こそが、単に「紙の廉価版」や「Webの劣化版」ではない、新しい媒体、新しい手段としての電子出版の未来につながる道だと信じています。
……という話はさておき、場所的にはLLの話がぜんぜんできなかったのは残念というか申し訳ないところです。この手のシステムの実装には比較的LLが向いている(Webアプリ開発にLLが向いているの同じような意味で)ので、その辺りにいけば話もできたんですが、そこまでは時間が足りなかったのでした。すみません。とりあえず達人出版会の出版システムについては、改めて紹介したいと思っています。